Column
膝は、私たちの体重を支える重要な役割をしています。「立つ、歩く、スポーツをする」など、日常当たり前のように行う動作ですが、膝には相当の負担がかかります。そのため、膝は大変故障しやすい部位といえます。
膝の関節は、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)のつなぎ目の役割を果たし、「関節包」と呼ばれる袋に包まれています。つなぎ目には、「関節軟骨」や「半月板」といった軟骨があり、関節の動きをスムーズにしたり、衝撃を和らげるクッションの役割をしています。「関節包」のいちばん内側の膜(「滑膜」)では、関節軟骨に栄養を供給したり、関節の動きを滑らかにする「関節液」の分泌が行われています。
膝に痛みをもたらす原因は大きく3つに分けられます。
外傷・・・ 事故などによる骨折、半月板や靭帯の損傷。
炎症・・・ 慢性関節リウマチや化膿性関節炎などによる炎症。
老化・・・ 膝の軟骨や骨が老化して体重を支えきれなくなり、関節が変形して炎症を起こす。(変形性膝関節症)
変形性膝関節症
膝の痛みで治療を受けている人の大多数は、この病気が原因となっています。
加齢とともに、膝の軟骨が少しずつ衰え、弾力を失っていきます。そこへ、激しい運動や体重増加などによって、強い負担がかかると、軟骨がすり減っていき、骨と骨が直接ぶつかりあうようになるので痛みが起こります。
●変形性膝関節症にかかりやすい人
50歳以上 … 年齢が高くなるほどかかる可能性は高くなる
女 性 … 男性よりも筋肉が弱いため、また、女性ホルモンの影響も考えられる
肥 満 … 体重の重い人はその分膝への負担がかかり、軟骨がすり減りやすくなる
体 質 … 極端にO脚の人
●変形性膝関節症の症状
【初期】・膝のこわばり、関節が固くなる
・歩行時の痛み
【中期】・膝の腫れ(熱感を伴う)
・水がたまる
・膝の痛み・音がする
【末期】・膝の強い痛み
・関節のO脚変形
-ポイント-
・ 膝の関節の動きをよくする運動と、膝の筋力を強くする運動を行なう。
・ 毎日、朝・昼・晩に行なう。
・ 続けて行なうことが大切。
・ 痛みがある時や、膝に炎症が起きている場合には、行なわずに安静にする。
● 膝の関節の動きをよくする運動
① いすに腰かけ、片脚を前に出す。
② 前に出した脚の膝頭に両手を当てて、ゆっくり10~20数えながら、膝の裏を伸ばすように押す。
(最初は弱めに、それから徐々に強く押すようにするのがポイント。)
③ 両方の脚を交互に10回ずつ行なう。
● 膝の筋力を強くする運動
<A>
① いすに腰かけて片脚をゆっくり上げて、5つ数える。
② 図のように片脚を伸ばした状態から脚を上げるとよい。
③ これを両脚交互にくり返す。
※ 楽にできるようになったら、脚におもりをつけてもよい。おもりは500g~1kg程度で、自分の筋力に合わせること。
<B>
① 横になって、片方の膝を90度くらいに曲げて立てる。
② 伸ばしている方の脚を20~30cm上げて、ゆっくり5つ数える。
(楽にできるようになったら、おもりをつけてもよい。)
③ これを10回、両方の脚で行なう。
<C>
① 巻いたタオルを膝の下に入れて、横になる。
② 両脚をまっすぐ伸ばし、膝でタオルを床に押しつけるようにする。
③ 力を入れたまま、ゆっくり5つ数えて、力を抜く。
④ これを10回くり返す。
<D>
① 横向きに寝て、片腕で頭を支える。
② 股を開くようにして、脚を上げる。
③ 両脚の角度が30度くらいになるように上げたまま、ゆっくり5つ数える。
④ これを両脚交互に10回行なう。
<E>
① 膝からももの辺りで枕をはさみ、両脚の内側に力を入れる。
② 力を入れたまま、ゆっくり5つ数えて、力を抜く。
③ これを10回くり返す。
膝を故障しているときに、「膝に水がたまる」ことがよくありますが、この「水」とは、先に説明した「関節液」のことです。関節液は関節包から分泌され、通常は1cc以下に保たれています。しかし、膝関節に炎症が起こると、その炎症を抑えるために関節液の分泌量が増えます。実は、関節液には、「ヒアルロン酸」という炎症を抑える効果のある成分が含まれているのです。関節液が増えると、関節包が引き伸ばされて膝に痛みが生じてきます。これが「膝に水がたまる」状態です。
出典:日本成人病予防協会
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